こなごころ

きもちをつづるばしょ

こころこわれる

祖父は真面目でしっかりした人だった。

祖母は世話好きの優しい人だった。

 

子供の頃、仏壇の前で祖父の膝の上に座ってお経を聞いていた。

全然分からなかったけれど、お経の最後に仏壇の鐘を鳴らすのが楽しかった。

 

たまに、テレビを見ながら祖父に肩叩きをしてあげていた。

お小遣いに10円を貰って、それをこつこつ貯めていた。

 

今でもそうだが、俺はお金には執着が無いにもかかわらず、貯金するのが好きだ。

俺にとって、それが頑張った証だったから。

 

祖母は俺を連れて、よく近所を散歩してくれた。

近所のお婆さんには「可愛い」だの「また大きくなった」だのと毎度のように言われ、人見知りの俺はいつも恥ずかしがって祖母の後ろに隠れた。

 

俺は当時は泣き虫だったから、姉にいじめられてよく泣いていた。

祖母はいつも俺を庇ってくれた。

 

 

 

祖父は定年後は畑仕事をしていた。

実家の所有する土地には飛び地があり、祖父は畑の手入れをしに、時々農作業用の軽トラを運転することがあった。

 

ある日、祖父は軽トラのバッテリーをあげてしまった。

ライトを消し忘れてしまったせいだ。

それが二度、三度と続いた。

 

歳が歳だし、物忘れがひどくなってしまったのだろう。

畑のことは諦め、人様に迷惑をかける前に父は祖父の免許を返納させた。

 

ある日、祖父はコピー機を使って何かを印刷しようとしていた。

観察してみると、コピー機から出てきているのは真っ白な印刷用紙ばかりだった。

どうやら、コピー機の使い方を忘れてしまったらしい。

それに気付いた祖母が声をかけると、祖父は少し声を荒らげ、印刷を諦めた。

 

家族が共有で使っているペンやハサミが無くなることがあった。

決まって祖父の部屋で見つかった。

こっそり元に戻しておいても、またいつの間にか祖父の部屋に移動していた。

 

たまに新聞が切り抜きされていることがあった。

それも古新聞ではなく、当日の新聞だ。

祖父は新聞の中に自分の名前と同じ文字を見つけると、その周辺の記事を切り取っていた。

自分に関係する記事だと思っていたようだ。

 

 

 

いつからか、祖父は家族を名前で呼ばなくなった。

祖父が祖母を呼ぶときは「おい!」と、祖母に声をかけられたときは「なんや!」と怒鳴った。

 

祖父は思うように言葉が出なくなり、「あれ」を多用するようになった。

祖母は祖父が何を言いたいのか理解できず、二人はよく喧嘩するようになった。

俺が止めようとしても、二人ともまったく聞く耳を持たなかった。

 

俺は祖父母にはなるべく関わらないようにした。

当時高校生だった俺は、勉強のストレス、部活のストレス、否応なしにくる反抗期のストレスに、祖父母に対するストレスまで抱えきれなかった。

 

俺は祖父に対しては無視を決め込んだ。

どうせ会話が成り立たないのだから、下手に応答したってこじれると思ったからだ。

 

 

 

ある日、祖母がガンで入院した。

すでに末期ガンで、余命は半年ほどと聞かされた。

そのことは祖母自身には知らされなかった。

 

祖母はよく「帰りたい」と嘆いていた。

 

俺は何度か見舞いに行ったが、痩せ細っていくのが目に見えて分かった。

やがて身体もほとんど動かせなくなったが、声をかけたり手を握ったりすると、か細い声で返事をしたり頷いたりしてくれた。

 

祖父は時々、家の中で祖母を探し回るようになった。

深夜に徘徊することもあった。

 

祖父は鏡に向かって話しかけるようになった。

祖父の機嫌が悪い時は、鏡と喧嘩していた。

 

 

 

ある日、祖父は行方不明になった。

家族総出で探し回り、俺は家で留守番した。

 

俺がボソッと「あんな奴、帰ってこなくてもいいのに」と呟くと、姉に叱られた。

姉貴は嫁いでからは普段実家にいないくせに、よく偉そうなことが言えたものだ、と思った。

 

警察や町の人の協力もあり、家から1kmほど離れたところで見つかった。

それからは、常に玄関に鍵をかけられるようになった。

 

祖父はアルツハイマー認知症だった。

それでも、この時点では要介護認定を申請しても軽度と判定され、デイサービス等も受けられなかった。

 

 

 

祖父はあまり怒らなくなった。

というより、皆が怒らせないように気を遣うようになった。

 

祖父は自分で服を着られなくなった。

シャツを足に穿き、ズボンに腕を通そうとしていた。

 

母が着替えを介護するようになった。

 

祖父は自分でご飯が食べられなくなった。

箸の使い方が分からなくなったのだ。

 

母が食事を介護するようになった。

 

祖父は自分で用が足せなくなった。

朝になると家中に糞尿が垂れ流されていることもあった。

 

母がトイレを介護するようになった。

 

 

 

祖父はもう、家族が家族であるということなど理解できていなかった。

 

俺は祖父のことを「糞を製造するだけの動く肉塊」と認識するようしていた。

そうでもしなければ堪えられなかった。

 

自分の心が壊れているのを感じた。

それでも、人を殺すより、自分が死ぬより、マシだと思った。

 

いずれ俺より先に死ぬのだから、その時を待てばいい。

時間が解決してくれる。

それだけが支えだった。

 

母もそうだったのかもしれない。

母は毎日のように愚痴をこぼし、一人の時には叫ぶこともあった。

 

いつか母が倒れてしまうのではないかと思えた。

  

再び要介護認定を申請すると、ようやく認定がおりた。

週に1~3日程度だが、デイサービスも受けられるようになった。

 

祖父は嫌がることなくデイサービスに行った。

仕事に行くような感覚だったのかもしれない。

 

 

 

ある日、祖母が亡くなった。

余命宣告は半年だったが、実際は1年ほどだった。

 

その日は雨だった。

 

俺は病院へ向かう車の中で、大学に忌引き届を出さないといけないことばかり考えていた。

 

病室に入ると、叔母と従兄と姉が大泣きしていた。

俺は居心地の悪さを感じて、ベッドに横たわる祖母の遺体を一瞥しただけですぐに病室を出た。

 

父と母は病室の外で静かに涙を流していた。

俺は病院の駐車場に降りしきる雨をぼーっと眺めていた。

 

俺が泣くことはなかった。

我慢していたわけではない。

むしろ、少し肩の荷が下りたようにすら感じた。

 

 

 

祖母の葬式の日、祖父はニコニコしていた。

とても無邪気な笑顔だった。

 

叔母に連れられて棺の中の祖母の顔を見た祖父は、そのままよだれを垂らしてしまった。

「ああ、こいつはもう人間じゃないんだな」と改めて感じた。

 

ここでも、俺が泣くことはなかった。

 

 

 

ある日、祖父が入院した。

 

俺が次に祖父を見たのは、祖父の通夜の日だった。

入院してから間もなく亡くなったのだ。

葬儀は祖母の時と同じ葬儀場で行われた。

 

祖父が軽トラのバッテリーをあげてしまったあの時から、もう10年が経過していた。

 

ようやく解放された。

嬉しかった。

文字通り、飛んで跳ねて喜んだ。

人生で最も嬉しかったと言っても過言ではないかもしれない。

 

それからの俺は、壊れた心の隙間を埋めるように人生を楽しんでいる。

ゲーム配信での指示コメって

当方、ニコ生にて長らくゲームを中心に配信を続けている者である。

それにちなんで、こんな話。

 

ゲーム配信における視聴者からの指示コメについて

 

以前より、俺の配信では概要欄に

指示、煽り、ネタバレ等はお控えください。

という注意書きをしている。

煽りとネタバレについては害悪なので語るまでもないが、指示については多くの人が"善意で"やってしまいがちなので、その辺を語っていきたい。

 

指示コメとは、

「この敵は○○が弱点だから××で攻撃すると良いよ」

「ここは○○を使うべきだよ」

「○○した方が効率が良いよ」

といったように配信者に指示やアドバイスをするコメントのこと。

  

まあ指示コメしたくなる気持ちは分かる。

プレイヤーが思うように動いてくれないと、もどかしく感じてしまうこともあろう。

上手くいかずに悩んでいるところを見ると、「このゲームのことを嫌いになってほしくない」と思って、指示コメをしてしまうこともあろう。

「俺はこのゲームのこと詳しいんだぜ」ってアピールしたくなることもあろう。

 

しかし、個人的には指示コメされることは嬉しくない。

俺としては、ゲームはすべて自分の頭で考え、自分なりの答えを見つけながらプレイしたいのだ。 

正解や最適解だけがゲームの面白さではない。

たとえグダグダしてしまっていても、大人しく見守るなり、そっ閉じしてもらった方が良い。 

 

ただし、例外もある。

つまり、指示コメしてほしいケース。

そんなことを言ってしまうと、ワガママと思われてしまうかもしれないが。

逆に言えば、俺が視聴者の時には"こんな状況なら指示コメをしようと思う"っていう話でもある。

例を挙げると、以下のようなケース。

  • 指示やアドバイスを求めている(許容している)ことが明示されているケース
  • システムの設定で問題が改善できるケース
  • ゲームが進行不能(進行困難)に陥ってしまう恐れがあるケース
  • (オンラインゲームにおいて)著しく他のプレイヤーへの迷惑行為になるケース

 

指示コメは配信者によって、また時と場合によって「どの程度はOKでどの程度はNG」のラインがまちまちだ。

俺の場合は原則指示コメNGなので、上記はある意味"最低ライン"だろう。

もし指示コメするか迷った時は配信者にまず確認すべきだし、確認が取れないなら何もしない方が良い。

また、指示コメをするにしても、語気が強めになったり煽り気味になったりすると、配信者や他の視聴者から嫌われるので気を付けよう。

たとえ常連でも。

 

それと、配信者側も気を付けるべきことがある。

ゲームで上手くいかないことがあると不機嫌になってしまうことだ。

もしそれが癖になってしまっていると、親切な視聴者はなおさら「間違ったことをして機嫌を損ねてしまわないように指示してあげよう」という気持ちが働いてしまう。

ゆえに、指示厨が湧く原因になってしまいがちだ。

 

謎解きが分からないのは、ゲームの制作者の意図と共鳴できなかっただけだ。

強敵に勝てないのは、自分の立てた戦略が合わなかっただけだ。

要は、正解や最適解にたどり着くまでのプロセスは人それぞれであり、それが早いか遅いかは"運"だ。

ありとあらゆるゲームが上手くできるわけじゃない。

得意なゲームもあれば苦手なゲームもある。

そういう風に、割り切れるようにしたいところ。

自戒も込めて。

配信で使ってるSEまとめ

配信のコメントで使えるようにしているSEの一覧をまとめておこう。

 

・SE名

入力文字列

のフォーマットで記載していく。

こういうSE欲しいとか、おすすめのSEとかあったら、教えてくれると悦ぶ。

 

・あ~ん♡

あ~ん/ア~ン/あーん/アーン

 

・上手に焼けましたー!(モンハン)

上手に焼けました/じょうずにやけました/上手にやけました/じょうずに焼けました

 

・チーン(仏壇の鐘)

チーン/ちーん

 

・デデーン(ガキの使いっぽいやつ)

デデーン/ででーん

 

・ファミマ入店音

ファミマ/ファミリーマート/ふぁみま/わこつ

 

・にっひっひー さぁ覚悟!(わグルま! ヨウコ)

にっひっひ/さあ覚悟/さぁ覚悟

 

・それじゃあ 行ってくるよー!(わグルま! ヨウコ)

それじゃあ行ってくるよ/それじゃ行ってくるよ/それじゃいってくるよ/行ってくるよ/いってくるよ

 

・いっただっきまーす!(わグルま! ヨウコ)

いっただっきまーす/いただきます

 

・お腹減ったよー ご主人様ー(わグルま! ヨウコ)

お腹減ったよ/お腹へったよ/おなか減ったよ/おなかへったよ/お腹減った/おなかへった

 

・わグルま!(わグルま! ヨウコ)

わグルま/わぐるま

 

・たっだいまー!(わグルま! ヨウコ)

たっだいまー/ただいま

 

・あはっ 何か用かな?(わグルま! ヨウコ)

何か用かな/何かようかな/なにか用かな/なにかようかな

 

・いっくよー!(わグルま! ヨウコ)
いっくよ/行っくよ

 

・よしっ やっぱりこれだよね(わグルま! ヨウコ)

やっぱりこれだよね

 

・ふっふふーん 今日もふさふさ~(わグルま! ヨウコ)

今日もふさふさ/今日もフサフサ/きょうもふさふさ/きょうもフサフサ

 

・勝利のファンファーレ(FF)

ファンファーレ/やったぜ

 

・レベルアップ(DQ

レベルアップ

 

・びっくり音(メタルギアソリッド

!?

 

・わーぉ♡

わーお/わーぉ/ワーオ

 

・ごまだれ~(ゼルダの伝説

ごまだれ

 

・テーレッテレー(ねるねるねるね
テーレッテレー

フリーゲームのプレイ履歴まとめ

放送でプレイしたフリーゲームをまとめた。

大体プレイした順。

 

壊リス・壊

猫戦車

おもじゃん

the_TRIAL

白の魔王

D.M.

狩枯村

ンアッー!(≧д≦)

激烈おしりタッチ

FuhrungWeiss

迷探偵くーちゃん -AMOI美術館をさまよってー

TimeLeaper

脱出メロンボール

神様症候群。OP~第一章

えんどうさん

クリーチャーと恋しよっ! -ここのえこころ-

iRing・ω・Ring!

ミドリカ・コメディー・ビザールショー

少女奇談

へんたいサーガ

トレハン!

Espresso

飛べば良いじゃん。

Cake Make!

ものいうやかた

路地裏喫茶店~Le Petit Nuit~

HAND

AMANI

くまのプーさんホームランダービー

Chime

ももとポーチとすなどけい

日常侵食ホラー つぐのひ

黒先輩と黒屋敷の闇に迷わない

狐の日記

ハコイリさま症候群

月光妖怪

もしも死ねぇ

UTOPIA 幻想ホラーアドベンチャー

どうぶつえんEX

みんなの星探2星月物語

てのなるほうへ

柳太郎伝記~古宮村編~

真夜中の人形使い

ゆめにっき

学校の境怪

柳太郎伝記~出雲城編~

囚体 - HeadLess

はーと・いんざ・はーと

いちろ少年忌譚

NANACA†CRASH!!

隣の部屋にラスボスがいる。

Lost Maria -名もなき花-

さつきるみん!

一本道迷宮

ふしぎの城のヘレン

Girls Carnival!

Book Book Book

ha*co

雨宿バス停留所

Records -stereo-

鬼子母神の夢

Wachtraum

カリスは影差す迷宮で

四月馬鹿達の宴

魂篭神社

りるれふ

無痛少女

箱庭13

しあわせな黒猫

柳太郎伝記~奇住山編~

―Rebellion―

Hero&Daughter

魔女の家

ラルフの箱庭冒険譚

人柱勇者

FIND ME

境界線一歩手前

一寸童子

小さな魔女と不思議の館

「ここはナモナキ村だよ!」

ジャパンスモウカップ

白魔女と少年

もちこさん

血染めの花

のじゃロリのヤンデレ黙示録

Seetate

Velzitave_Story+

少女偽談

Monochrome

戦士が育児休暇を取って困っている件

今日がショタい面

朝溶けの魔女

僕が魔法使いに捕まって女の子にされたワケ

妖刀伝

紋華繚乱

しょぼんのアクション

魔王クエス

Luna☆lic

ふつうのRPG

超 青 春 物 語

めるてぃんぐ♥あいすくりぃむ

魔法少女☆ラブリーインフェルノ

ドラマチック冒険

死輪お嬢様のお買い物♪

企画:苦裏素魔素

どろぐちょバレンタイィン

カズマと久我山の奇妙な廃校探検

LiEat

あかずきん殿

禍代の神子-灰桜-

日照雨~そばえ~

ナースサムライ

企画:迅愚瑠辺瑠

螢火の庭

夏祭りとおばけやしき

エンジョイ!都会街

幼女天使とロリコン紳士

ハッピーフラワークエス

HAPPYEND.

絆輝探偵事務所

絆輝探偵事務所Sidestory

被虐のノエル

Pure_Fultz

ゴールデンファーザー

ベーコンレタス列伝

あれ?エッチなこと考えていませんか?

わくわくベジタブル

霧と太陽の王

虚ろ町ののばら

HolyLoveWorld-Aulan and Onie-

キャッサバ

クラスメイズ

少女は裏山へ薬草をとりに

ゲームのプレイ履歴まとめ

とりあえず持ってるゲームを書き綴ってみる。

たぶん随時更新予定。

どの程度やったかも書いてみる。判定基準は適当。

→ 未プレイ or 頓挫

 → 普通にプレイした or 普通にEDまで迎えた

→ 用意されている要素は概ねプレイした

→ そこそこやり込んでプレイした

→ かなりやり込んでプレイした

→ やり過ぎ

 

SFC

カービィボウル

スーパードンキーコング

スーパードンキーコング2

スーパードンキーコング3

すーぱーぷよぷよ

スーパーマリオRPG

スーパーマリオカート

星のカービィスーパーデラックス

 

N64

ウッチャンナンチャン炎のチャレンジャー 電撃イライラ棒

スーパーマリオ64

ゼルダの伝説 時のオカリナ

ゼルダの伝説 ムジュラの仮面

大乱闘スマッシュブラザーズ

ドラえもん のび太と3つの精霊石

ドンキーコング64

ボンバーマン

バンジョーとカズーイの大冒険

バンジョーとカズーイの大冒険2

星のカービィ64

マリオカート64

マリオストーリー

マリオテニス64

マリオパーティ

マリオパーティ3

ヨッシーストーリー

 

GBA

スーパーマリオアドバンス2

スーパードンキーコング

ポケットモンスター ルビー

メイドインワリオ

 

GC

カービィのエアライド

スーパーマリオサンシャイン

ゼルダの伝説 風のタクト

ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス

大乱闘スマッシュブラザーズDX

動物番長

ピクミン

ピクミン2

ビューティフルジョー2

FINAL FANTASY CHRISTAL CHRONICLES

ペーパーマリオRPG

ルイージマンション

ワリオワールド

 

3DS

THEATRHYTHM FINAL FANTASY CURTAIN CALL

ゼルダの伝説 時のオカリナ3D

ドンキーコング RETURNS 3D

牧場物語 はじまりの大地

マリオカート7

 

Switch

The First Tree

スーパーマリオ オデッセイ

スーパーマリオ3Dコレクション

 スーパーマリオ64

 スーパーマリオサンシャイン

 スーパーマリオギャラクシー

SUPER MARIO BROS. 35

世界のアソビ大全51

ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド

大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL

Dokuro

ピクミン3 デラックス

ブルームーン

ペーパーマリオ オリガミキング

返校 -Detention-

Hollow Knight

 

PS

ウィニングイレブン 2000

クラッシュバンディクー

クラッシュバンディクー2

クラッシュ・バンディクー3 ブッとび!世界一周

幻想水滸伝

サイレントヒル

サモンナイト

サルゲッチュ

スペクトラルタワー

聖剣伝説 LEGEND OF MANA

せがれいじり

チョコボレーシング ~幻界へのロード~

テイルズ オブ エターニア

デュープリズム

DX人生ゲーム

FINAL FANTASY

FINAL FANTASY

FINAL FANTASY

FINAL FANTASY Ⅶ

FINAL FANTASY

ぷよぷよSUN決定版

メタルギア ソリッド インテグラ

 

PS2

ICO

大神

塊魂

KINGDOM HEARTS FINAL MIX

KINGDOM HEARTS

KINGDOM HEARTS Ⅱ Re:CHAIN OF MEMORIES

KINGDOM HEARTS Ⅱ FINAL MIX

クラッシュ・バンディクー4 さくれつ!魔神パワー

SIREN

サルゲッチュ2

サルゲッチュ3

スカイガンナー

せがれいじり 変珍たませがれ

零~ZERO~

デビルメイクライ

デビルメイクライ2

デビルメイクライ3

デビルメイクライ3 Special Edition

ドラゴンクエスト

どろろ

ビューティフルジョー 新たなる希望

FINAL FANTASY

FINAL FANTASY Ⅹ International

FINAL FANTASY Ⅹ-2

FINAL FANTASY Ⅹ-2 International+LASTMISSION

FINAL FANTASY

ぷよぷよフィーバー

ブラボーミュージック

みんな大好き塊魂

みんなのテニス

龍が如く

龍が如く2

ワンダと巨像

 

PS4

大神 絶景版

風ノ旅ビト

KINGDOM HEARTS HD1.5+2.5 ReMIX

 KINGDOM HEARTS FINAL MIX

 KINGDOM HEARTS Re:CHAIN OF MEMORIES

 KINGDOM HEARTS Ⅱ FINAL MIX

 KINGDOM HEARTS Birth by Sleep

KINGDOM HEARTS HD 2.8 ファイナルチャプタープロローグ

 KINGDOM HEARTS Dream Drop Distance

 KINGDOM HEARTS 0.2 Birth by Sleep -A fragmentary passage-

KINGDOM HEARTS

 KINGDOM HEARTS Ⅲ Re Mind

KINGDOM HEARTS Melody of Memory

SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE

人喰いの大鷲トリコ

FINAL FANTASY X/X-2 HD Remaster

 FINAL FANTASY X

 FINAL FANTASY X-2

FINAL FANTASY ⅩⅤ

FINAL FANTASY ⅩⅤ MULTIPLAYER: COMRADES

 

PSP

KINGDOM HEARTS Birth by Sleep

GOD EATER

GOD EATER BURST

DISSIDIA FINAL FANTASY

DISSIDIA 012 FINAL FANTASY

FINAL FANTASY 零式

FINAL FANTASY

FINAL FANTASY

FINAL FANTASY

勇者30

 

PC

逆転東方2

東方蒼神縁起

東方遊宴世界

ぱちゅコン!

魔理沙と6つのキノコ

 

Steam

NEKOPARA Exstra

NEKOPARA Vol.0

NEKOPARA Vol.1

NEKOPARA Vol.2

NEKOPARA Vol.3

Undertale

犬鳴トンネル

怨霊

ごく普通の鹿のゲーム DEEEER Simulator

事故物件

NekoMiko

Human: Fall Flat

FINAL FANTASY ⅩⅢ

FINAL FANTASY ⅩⅢ-2

LIGHTNING RETURNS : FINAL FANTASY XIII

Portal2

YUMENIKKI-DREAM DIARY

この胸の痛みを俺はよく知っている

社会人3年目、2016年の春のこと。

とある辞令が下った。

 

職場にもまあまあ慣れ、プログラマとしてそれなりに仕事ができるようになったような気がする頃。

部長からお呼び出しがあった。

 

「また何かやらかしたか……どうせろくなことじゃないんだろうな……」

 

と嫌な予感に駆られた。

 

部長は悪い人ではないのだが、ちょっと苦手だった。

年齢が離れている分、どうしても気を遣うし、ジェネレーションギャップもよく感じる。

 

それに、社会人としてのマナーとか、仕事の進め方とか、事あるごとに細かく注意されていた。

まあでも、注意されるってことは自分が悪いわけで。

実際、言っていることはいつも筋が通っているし、ちゃんと話せば分かってくれる人でもある。

 

恐る恐る、部長の待つ会議室へ入った。

 

「失礼します」

 

「まあどうぞ、掛けてください」

 

緊張して腹が痛い……。

 

「最近調子どう?」

 

「まあ、ぼちぼちですかね」

 

社交辞令もそこそこに、さっそく本題へ入る。

 

「今度、東京のオフィスの方でちょっとした案件があってね」

 

なるほど、この時点で察しがついた。

 

「君に手伝ってもらおうと思っているんだよ」

 

要するに、仕事の依頼の話だ。

 

俺の会社には東京と大阪にオフィスがあって、俺はいつも大阪のオフィスの方で仕事をしている。

だから、この仕事を引き受けるということは、東京へ転勤ということになる。

 

一般的には、"仕事を依頼される"というのは、それなりに名誉なことなんだろうと思う。

でも、未知の職場で仕事をするというのは、なかなか不安だ。

 

それに俺の会社では、一度東京のオフィスに異動になると戻ってこない人が多い。

別に居心地が良いとかそんなことではなく、単に東京の方が仕事量が多くていつも人手が足りていないからだ。

中小企業なもんで、人材の確保も簡単ではないらしい。

 

「どういう内容の案件ですか?」

 

とりあえず承諾するかどうかは一旦保留して、質問を投げてみる。

 

C++の案件でね。まあLinux系のシステムの開発になるんだけど」

 

それを聞いて不安が増した。

俺がそれまで携わっていた仕事も一応C++での開発ではあるけど、使っているフレームワークMFCだ。

例えるなら、今まで和菓子を作ってたのに精進料理を作ることになった、みたいな感じだろうか。

 

Linux系での開発もしたことがないわけではないのだが、Linuxはどうも毛嫌いしていた。

英語が心底苦手だったもので。

 

「いつからいつまで、っていうのは決まっているんですか?」

 

本当は最初に話が出た時点で引き受けざるを得ないことは察しているのだが、一応聞いてみる。

 

「今年の5月中旬から7月末までの予定です」

 

つまり大体2ヶ月半。

でも期間が決まっているからといって安心はできない。

元々3ヶ月間の転勤予定だったのに、1年以上経っても戻ってこない、なんて人もいるのだ。

 

「仕事はどういった感じで進めるんでしょうか」

 

「Aさんの指示のもとで動いてもらいます」

 

「ちなみに、住むところとかは……」

 

「総務の方に手配してもらう予定です」

 

「家賃とか、交通費とかは……」

 

「会社が出します」

 

質問して時間を稼いでみるものの、これはもう俺のYes待ちだ。

 

「どうしても行けないような理由はある?」

 

「えっと……ないです」

 

拒否権なんてない。

不安だから行きたくないというのは通らない。

 

「じゃあ、よろしくね。詳しい話は後で総務の方から連絡してもらうから」

 

「分かりました。頑張ります」

 

そう答えるしかなかった。

 

 

 

後日、転勤中の仮住まいとなるマンションの情報と、東京行きの新幹線の切符を貰った。

そこでマンションの情報を見て、目を疑った。

 

俺の給料より家賃の方が高い。

俺をもう一人雇ってお釣りがくる。

さすがは東京の某一等地だ。

 

というか、家賃分を給料に回してほしいと思った。

まあそれだけ期待してもらっているってことなんだろう。

とポジティブに考えることにした。

 

当初は不安しかなかったが、転勤日が近づくにつれて気持ちの整理もついていった。

"新しい生活が始まる"と考えれば、何かワクワクするような気がしないでもない。

 

転勤日の前日の日曜日。

重いスーツケースを引きずって、俺は予定通り新幹線で東京へ向かった。

結局、東京駅で迷ったために少し時間はかかったものの、無事マンションに到着した。

その日は5月にもかかわらず暑いくらいの快晴で、俺は汗だくになった。

 

マンションの玄関口はオートロックで、中に入るとエレベータがあり、部屋の扉もまたオートロック。

いつもは階段を上って鍵を使って扉を開けているだけから、なかなか新鮮だった。

 

とはいえ、別に部屋の中はあまり広くはない。

まあ事前に貰っていた情報で分かっていたのだが。

 

とりあえず荷物を置いて、まずはネットが使えるかどうか確認。

部屋の中のLANケーブルの挿し口を探してみるが……ない。

事前に確認した時には「たぶんあるんじゃない?」と聞いていたのだが……。

わざわざルーターを持ってきていたのに、無駄になってしまった。

 

一応、ポケットWi-Fiは備え付けてあり、とりあえずこれでネットに繋ぐことはできた。

Wi-Fiといっても通信は安定していて、使用感も特に問題なさそうだ。

 

部屋を一通り確認してみる。

 

ベッドや冷蔵庫など、基本的な物はそろっている。

テレビも一人部屋には十分なサイズだ。

風呂はちょっと広かった。

 

ベランダは狭すぎて洗濯物が干せそうにない。

部屋干しせざるを得ないようだ。

 

コンロはあるが……鍋がないな。

ポットと炊飯器は……なんか汚い。

調理するのは厳しそうだ。

 

そういえば、アイロンがない。

重いから持ってこなかったのだが、これからしばらくアイロンがけができない……。

 

冷蔵庫には何もないため、とりあえず晩飯を調達しなければならない。

ネットで近所のスーパーの位置を調べると、徒歩3分ほどのところにあるのがすぐ見つかった。

 

特に迷うこともなくスーパーにたどり着き、適当に冷凍食品やカップ麺、飲み物を買って帰った。

部屋でお湯を沸かす手段がないため、カップ麺は会社に持っていく用だ。

 

あとはもう特にすることもなかったため、適当にネットサーフィンで時間をつぶした。

晩飯に冷凍食品のチャーハンをいただき、明日に備えて早めに寝ることにした。

 

 

 

転勤初日。

通勤時間は徒歩10分くらい。

9時が始業時間のところ、少し早めの8時半くらいに出社した。

 

すでにA先輩だけ来ていた。

聞くところによると、A先輩は7時とか6時とかに来ていることもあるらしい。

これからしばらく、この人の指示で仕事をすることになる。

 

東京のオフィスは正社員も派遣社員も出入りが多く、俺が転勤してきたことも別段珍しくはない感じだった。

まあ新入社員ではないから、盛大に歓迎されることもないのだが。

 

俺はA先輩の対面席になった。

初日の最初の仕事は、案件の内容の把握。

仮想マシンに試験用の環境を構築して、概要説明を受けて、仕様書を読む。

 

……まったく分からない。

 

質問しようにも、何が分からないのか分からないレベルで仕様書の内容が分からない。

というか、どう考えても仕様を知らない人間が読んで理解できる仕様書じゃない。

 

概要説明の時に

 

「分からないことがあったら何でも聞いて」

 

という世界一信用ならない言葉をA先輩の上司から賜ったが、果たして聞いてもいいものか。

 

……なんて考えていても埒は明かない。

他に聞ける人もいないし、素直にA先輩に質問してみる。

 

「とりあえず、何をどうしたらいいのかよく分からないんですが……」

 

ああ、分かってる。分かってる。

社会人の質問の仕方として、最悪なのは分かってる。

でも、途方に暮れているよりは、たぶんマシ。

 

A先輩はダルそうに溜息を吐いて、適当に説明してくれた。

分かったような、分からないような……。

 

さて、なんとなーく案件の仕様を把握して初日の仕事は終わり。

 

などということはなく。

 

終業時間が17時半なのに、17時半から打ち合わせ開始である。

それも、今回の案件では俺の会社は孫請けだから、片道30分かけて元請けの会社に訪問しに行くのだ。

初日だから顔合わせだけ、なんてことはなく、がっつり打ち合わせ。

 

まだ仕様もほとんど把握できていない中、飛び交う専門用語。

なんだか大事そうな発言を必死にメモしていくが、そんなことはお構いなしに議論が進む。

 

ようやく打ち合わせが終わって、マンションに帰ってきた頃にはもう23時。

 

初日で大阪に帰りたいと思った。

 

 

 

翌日の最初の仕事は、昨日の打ち合わせの議事録作成。

殴り書きしたメモを見返してみるが、やっぱりなんだかよく分からない。

 

四苦八苦して、なんとか帳尻が合うように議事録っぽい何かを作成した。

 

A先輩に確認してもらうと、

 

「ここはこうじゃないでしょ」

 

「ちゃんと聞いてた?」

 

「俺こんなこと言ってないよね」

 

と散々だった。

ちょっと傷つく……。

 

それが終わると、仕様書とにらめっこ。

相変わらずよく分からない。

 

そして今日も打ち合わせ。

議事録とかいう、どうせ誰も読まないもののために必死にメモを取る。

またしても、はるか上空を飛び交う専門用語。

 

5時間半の議論の末、また23時の帰宅。

 

あとは風呂に入って晩飯を食って寝るだけ。

 

すでにこの先やっていける気がしない。

2日目にして心が折れかけている。

 

 

 

毎日打ち合わせがあるわけではなく、翌週からは週1程度になった。

しかし、打ち合わせがない日でも定時で帰れるわけではない。

 

A先輩の許可が貰えなければ帰れないのだ。

当たり前のように帰宅時間が20時を過ぎていく。

 

仕事の内容はというと、俺に振られるのは調査や議事録作成といった雑務ばかり。

"C++の案件"と聞いていたのに、それらしい仕事は一切ない。

唯一作ったものと言えば、動作テスト用の100行にも満たないプログラムだけ。

 

そして何より辛かったのは、A先輩の態度だった。

怒鳴り散らすことこそないが、ネチネチと嫌味っぽく俺をこき下ろしてくる。

 

「そんなんじゃダメだろ」

 

「さっき"分かりました"って言ったよね? 全然分かってないじゃん」

 

「できないの? ちゃんと調べてんの?」

 

「はぁー(クソでか溜息)」

 

「分からないなら言えよ」

 

「話聞いてる?」

 

「モタモタすんなよ」

 

「やる気ないなら帰れよ」

 

俺の心に、チクチク突き刺さる。

自分の落ち度を咎められているだけに、その分ダメージが大きい。

 

「すみません」と言うたびに、自分の存在価値が無くなっていくのを感じた。

 

俺は何のためにここに来たんだろう……。

 

よく眠れない日が続いた。

 

 

 

昼はカップ麺、夜は冷凍食品の生活。

 

俺はどうにかして身体を壊せないかとずっと考えていた。

壊れてくれれば、きっと休めるのに。

 

自室のベッドに寝転んで天井を眺めていると、A先輩の声が脳内再生される。

否応なしに無気力感に襲われて、とても気分が悪い。

 

もし明日、俺が会社へ行かなかったらどうなるだろう。

何も言わずに、勝手に大阪へ帰ったらどうなるだろう。

 

帰りたい。帰りたい。帰りたい。

 

胸が苦しくなった。

 

ああ、知ってる。

 

この感覚。

 

この締め付けられるような胸の痛み。

 

俺はよく知っている。

 

高校の頃、勉強ができなくて、友達ができなくて、部活で何一つ活躍できなくて、祖父の認知症で家庭が崩壊しそうになっていて、どこにも居場所がなくて、誰にも相談できなかった。

 

いっそこの世から消えてしまえたらって考えていた。

 

その時と同じ胸の痛みだ。

 

こんな時、どうすれば良いかも、俺は知っている。

 

何も考えなければいい。

辛いって感覚を忘れればいい。

 

俺はそうしてきた。

 

どうせ2ヶ月半でオサラバだ。

終わりの見えている苦しみなんて、大したことはない。

 

そうやって他人事のように考えて、自分の心を守ってきた。

 

 

 

6月の中頃、部長と一度面談があった。

最近の仕事ぶりや今後の目標について話した後、

 

「絶対に予定通り7月末で帰りたいです」

 

と強く言っておいた。

そう言ったところで本当にその通り便宜を図ってくれるかどうかは分からなかったが、少なくとも俺自身の覚悟にはなった。

 

A先輩のことについて聞かれると、

 

「すごく仕事頑張ってる方ですけど、なんて言うか、私とはあまり反りが合わないですね」

 

とだけ言っておいた。

 

A先輩は、一言で言うと意識の高い社畜だ。

 

朝は誰よりも早く会社に来ているし、いつも遅くまで仕事をしている。

それどころか、土日も祝日も進んで会社に来ている。

 

正直、どうかしていると思うのだが、周りには"すごく仕事のできる人"として評価されている。

コミュニケーション能力が低いことは周囲にも認知されているようだったが、それ故に傲慢な態度も許容されていた。

 

実際、飲み会の席では他の社員から

 

「そういうタイプの人だから」

 

「根は良い人なんだよ」

 

「仕事はできるからねー」

 

なんて言われているのも見たことがあった。

だから、俺がA先輩の横暴を訴えたところで、俺に味方してくれる人がいるとは思えなかった。

 

少しでも早く帰れた時にはニコ生でゲーム配信をして、現実逃避するのが唯一の楽しみだった。

 

ただし、通信に使っているポケットWi-Fiには通信制限がある。

使い過ぎると制限がかかってしまうのだが、どの程度使っているのかが確認できない。

 

それで最初の月はたった一週間ほどで通信制限をくらってしまった。

通信制限が解除されるのは月末。

 

このストレスフルな毎日を生き抜くのに、ネットすら満足に使えなかった。

 

そうそう。

俺はこの頃、自作ソフトを作っていた。

俺の自作ソフトの3作目になる、Wingine Clockっていうやつだ。

 

日々すり減らされる自尊心を、俺は創作活動で補っていた。

ちなみに、"Wingine"は"Windowsのエンジニアになりたかった粉塵"の略であり、この時の俺の怨念が込められている。

 

 

 

転勤の終わりが近づくにつれ、俺は元気を取り戻していった。

残業も嫌味も相変わらず多いが、"もうすぐ帰れる"というただそれだけで元気が出た。

空元気だったのかもしれないが。 

 

仕事もいよいよ大詰め。

結局、開発はすべてA先輩がやってしまって、俺はソースコードには一切触れなかった。

 

残るはシステムの結合試験。

かなりの数の試験項目がある規模のシステムの割に、バグの数は少なかった。

 

A先輩のことは嫌いどころか反吐が出るほど憎かったが、それでもIT屋としての腕は認めざるを得なかった。

まあ、バグを出されたらこっちの仕事も増えるから、バグは出ない方が良いのだが。

 

 

 

7月末、転勤最終日。

結合試験の作業はその日の午前中に完了した。

 

転勤期間を延長させられることはなく、怒涛の日々がようやく終わった。

 

長く苦しい戦いだった。

 

転勤期間中、ほぼ嫌なことしかなかったし、自分のためになったことなど微塵もなかったと思う。

ここまで本当によく耐えた。

 

最後に、俺はとても気分良く

 

「お疲れ様でした!」

 

と言ってオフィスを出た。

 

 

 

大阪に戻ってきて1週間後。

 

溜まっていた仕事を片付けていると、部長からお呼び出しがあった。

 

「また転勤の話か……?」


と嫌な予感に駆られた。

 

恐る恐る、部長の待つ会議室へ入った。

 

「失礼します」

 

部長に無言で手招きされ、席に座る。

 

「君ね、東京での最終日、帰る時に何て言ったか覚えてる?」

 

「……?」

 

何か、お説教の雰囲気を感じた。

 

「"お疲れ様でした"……と、言ったと思いますが……」

 

「まあそれも言ったろうけど、他に何か覚えてないか?」

 

あれ、もしかして、何かマズいことを言ったか……?

 

「"もう二度と、ここには来ません"って言わなかったか?」

 

そんなこと、言ったっけ……。

 

えーっと……。

 

……。

 

…………。

 

………………。

 

……………………。

 

……そうだ、思い出した。

 

あの時、あまりにも気分が良くて、無意識に本音を口走っていた。

 

捨て台詞を吐くように、確かに言っていた。

 

ああ、これはヤバいやつだ。

やってしまった。

 

「言った……ような、気が、します……」

 

「あのねぇ、そういうこと言われた相手の気持ちも考えようよ」

 

「はい……すみません……」

 

……相手の気持ちを考えるって何だろう。

あいつは俺の気持ちを考えて声をかけたことなんてあっただろうか。

毎日毎日、ボロクソに踏みにじられた覚えしかない。

 

そういえばあの時、部長はあの場にいなかった。

つまり、あの場にいた誰かが部長にチクったということ。

 

あの場にいた誰か。

 

その瞬間、2ヶ月半の記憶がフラッシュバックした。

 

「そんなんじゃダメだろ」

 

「さっき"分かりました"って言ったよね? 全然分かってないじゃん」

 

やめろ。

 

「できないの? ちゃんと調べてんの?」

 

「はぁー(クソでか溜息)」

 

「分からないなら言えよ」

 

やめてくれ。

 

「話聞いてる?」

 

「モタモタすんなよ」

 

「やる気無いなら帰れよ」

 

胸が痛い。

 

頭の中がぐるぐるする。

 

焦点が定まらない。

 

言葉が出てこない。

 

今言われていることが頭に入らない。

 

息が苦しい。

 

溜め込んでいたものが、一気にこみ上げてくる。

 

ああ、ダメだ。ダメだって。

こんなところで、それは……。

 

どんなに理性で抑えようとしても、どうにもならない。

 

涙が溢れて、止まらない。

 

俺は静かに嗚咽した。

 

大の大人が、他人の前で。

 

 

 

さすがにこれには部長も驚いたのか、気を遣ってくれた。

 

「ちょっと落ち着くまで待とうか。しばらく会議室使ってて良いから。どれくらいかかる?」

 

「30分……くらい……いただけ……ますか……」

 

「じゃあ後でAさんにメール送っときな」

 

「……はい」

 

声を絞り出して返事をした。

 

俺は会議室で一人になって、ひとしきり泣いた。

 

30分後には落ち着きを取り戻していたが、涙の跡がバレそうだったため、40分を過ぎた頃にようやく会議室を出た。

 

自分の席へ戻り、A先輩へ送るメールの内容を考える。

 

"大変お世話になりました。"

 

"未熟ゆえに至らなかったことも色々あったかと思います。"

 

"数々のご無礼をどうかお許しください。"

 

"またお世話になる機会がありましたら、是非よろしくお願いいたします。"

 

全部嘘だ。清々しいほどに、まるっきり嘘だ。

むしろ当てつけだ。

 

俺はその内容でメールを送った。

ちなみにA先輩とその上司宛てに送ったのだが、返信があったのは上司の方からだけだった。

 

それから今のところ、東京への転勤の話は無い。

A先輩と関わる案件もない。

 

それどころか、Windows系のソフトウェアの開発を結構任されるようになっている。

何はともあれ、念願だったことは叶っているようだ。

 

それから、以前より部長が少し優しくなったような気がする。

気のせいかもしれないが。

 

 

 

俺は、"苦労したことが良い経験になる”なんてことはまったく思わない。

 

辛い経験は、ただ人の心を脆くするだけだ。

書いたり、書かなかったり。

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滅多に更新無いだろうけど、気が向いたときに何か書こう。

以前書いた記事も、改めて書き直しておこうかな。