こなごころ

きもちをつづるばしょ

Tシャツでリモート会議に出席するのはなぜ失礼なのかを教えてほしい

朝から何かメールが来てる。

差出人は上司だ。

件名:打ち合わせ お願い

本日15:00から打ち合わせお願いします。

 

何の打ち合わせなのかは書いていない。

"察しろ"ってことか。

この上司は割とそういうとこがあるんだよな。

 

まあ十中八九お説教なんだろう。

仕事のモチベが下がるなあ。

ストレスでトイレにシャトルランしながら、今あるタスクを片付けていく。

 

 

 

そうこうしてるうちに時間になったので、リモート会議室に入室。

 

上司「こんにちは! 聞こえてる?」

 

こな「あ、はい(クソテンション低い)」

 

上司「今日、なんで打ち合わせお願いしたか分かる?」

 

こな「ッスー……ちょっと、分からないですね(すっとぼけ)」

 

上司「分からない? なるほど。『分かります』って言ってくれたら良かったんだけど、分かりませんかぁ」

 

まあ俺も大体何のことかは分かってんだけど、叱られるのを分かっていて自分から言いたかないがな。

幸い、今日の上司はガチなトーンのお説教ではないようだ。

 

んで、何の話かと言うと。

 

 

 

先日、全社員を集めた合同リモート会議が開催された。

会議と言っても、部署毎に自部署の紹介をしたり、セミナーみたいにグループで課題の演習をしたり、この1年で特に頑張ってた人を表彰したりする年一行事だ。

元々は社員旅行でそういうことをやっていたんだが、ご時世の都合でリモート会議という形を取っている。

会社に出社してる人も一部いるが、大半は在宅での出席だ。

 

そこで俺がTシャツで出席していたことを、今回お咎めされている。

 

なんでそんなしょーもないことで、わざわざ打ち合わせの時間まで取ってお説教されてんのかって感じだが。

 

 

 

上司「一度、リハーサルしましたよね? で、その時にも言いましたよね? 覚えてます?」

 

こな「アー……服装のことですかねえ(今気付いたふり)」

 

上司「ですねえ。で、今もTシャツだねえ」

 

そう。

先週、合同リモート会議のリハーサルをした時にも、一度同じことを注意されていたのだ。

俺が最初から何のお説教か察していたのは、そのためだ。

 

上司「Tシャツはダメっていう認識は持ってる?」

 

こな「……いや、正直なところ、服装については何でも良いと思ってます」

 

上司「それはあなたの意見だよね」

 

こな「まあ、はい(おめーはひろゆきかよ)」

 

俺にしては珍しく反論してみたんだが、一蹴されてしまった。

っていうか、聞いといてそれかい。

 

上司「会社からは、それはダメだってことを以前から通達してるよね?」

 

こな「……(なんかそんなメール来てたな)」

 

社内ルールでは、ビジネスカジュアルとして襟付きの服まではOKだが、TシャツはNGということになっている。

 

上司「リハーサルで注意した時にも、キミは『ちゃんと着ます』って返事してくれたよね?」

 

こな「まあ、あの時は他の方もいたんで、そこで揉めて時間を取ってしまうのは迷惑が掛かると思って、そう答えはしましたけど……」

 

上司「そう答えはしましたけど、それは守りたくないということ?」

 

こな「……そうですね。正直なところ、そうです」

 

上司「えーっと……厳重に守ってくださいと言いましたけど、じゃあキミが守りたくないというのであれば、その理由を明確に文章にしてもらえるかな」

 

俺の反論が意外だったのか、お上司様をちょっと困惑させることに成功した。

普段は滅多に口答えなんてしないからな。

 

上司「別に業務時間中ずっと着てくれていなくてもね、極端な話、こうやって画面に映ってる時だけでも、ちゃんと着てくれてたら良いわけよ。っていうことを言ったとしても、どうですか」

 

こな「……(どうって言われてもなあ。カメラOFFにすればよくね? って言っても怒るんだろうなあ)」

 

上司「こういう打ち合わせの時だけでも、ちょっとカッターシャツを上に羽織ってくれれば、それで済むでしょ。部署内でもリモートで会議あると思うんだけど、みんなどんな服装してる? まあそこで守られてないなら、また全員に言わなきゃいけないんだけどさ」

 

こな「そうですね……」

 

実際のところ、部署内のリモート会議でも、俺と同じようにラフな格好をしている人はいる。

けど、それをここでチクるのは人売りみたいで嫌でしょうよ。

 

こな「……まあ、スーツを着る時に」

 

上司「スーツを着ろとまでは言ってないじゃない。襟付きのシャツで良いから着てねと言ってるわけで」

 

"スーツを着る時に使ってるカッターシャツしか襟付きの服を持ってないんですけど、わざわざそれを家で着たくないです"

と言おうとしたんだが、"スーツ"というワードだけ聞いたところで話を遮られてしまった。

この人、俺に話を振っときながら、いつも俺の話を最後まで聞かずに割り込んでくるから好きじゃない。

 

こな「ポロシャツは持ってないんですよね」

 

上司「会社に来る時はカッターシャツ着てたでしょ?」

 

こな「まあ、はい」

 

上司「だから、それをこういう打ち合わせの時に羽織ってくれれば、それで済むんじゃないんですか?」

 

こな「……」

 

俺はここで"そうですね"とは言いたくなかった。

"それで済む話"って言うなら、そんなことみんなが気にしなければ済む話では?

会議のためだけにカッターシャツ着るのは無駄でしょうよ。

 

上司「人に会う時はマスクしてねって言うのと同じで、最低限度の服装をしてねって言ってるわけよ。ね?」

 

こな「うーん……その、襟が付いているかどうかで、何がどう失礼なのかが分からないです」

 

俺が特に納得できないのは、この部分だ。

襟の無い服の方がよりカジュアルってのは、感覚的には俺も理解しているが、じゃあ"なんでダメなのか"ってのが分からない。

この人たちの言う"最低限度の服装"ってのが、なんで”襟付きの服”なのか。

Tシャツだからって、相手に何の迷惑がかかるってのか。

客相手ならともかく、俺は社内での会議しか無いから、なおさらそう思う。

 

 

 

上司「まあ見栄えですよ。本来であれば、スーツ着てほしいわけね。でも、そこまで要求されるのは、しんどいでしょと。だから、我々も要求のハードルを下げてるわけよ。家でわざわざスーツ着るのは嫌でしょうし。ね?」

 

こな「……」

 

上司「まあキミにはなかなか納得できないってのはあるのかもしれないけど、そういうルールだとして対応してほしいんですよ。どうですか」

 

こな「……いまひとつ、納得できないです」

 

"どうですか"と言われても、全然納得できる回答ではなかったわけで。

 

上司「そうすると、会社に出勤する時には、なぜカッターシャツ着るんですか? Tシャツでも良いと思ってるの?」

 

こな「まあ、Tシャツを着て行きたいというのもありますけども……」

 

圧迫面接っぽくなってきた。

でもそれ、論点のすり替えじゃない?

 

結局、この後も

  • そういうルールとして守って
  • 会議で自分の服装が映るような時だけ着ていてくれれば良い

という話ばかりで、的を射た回答がいただけない。

俺は馬鹿正直に意味の分からないルールに従うのが嫌なんだよな。

 

こな「その……なんで襟が付いていれば失礼でなくて、襟が付いてなければ失礼なのか、っていう感覚が私的には」

 

上司「納得できないと」

 

まーた話を遮られた。

……今のは大体合ってたから良いけど。

 

上司「まあね、君が言うように、いずれTシャツで仕事するのが普通になってくる時代も来るかもしれない。ただ、現状はそうではないので、それに合わせて欲しいということなんですよ」

 

そういう時代が来るのを妨げてるのは、あんたらの世代なんだよなあ。

 

上司「もしかしたら、そういうルールも来年とか再来年には撤廃されるかもしれない。クールビズで普段からネクタイをしなくても良くなったように、時代が変わっていくなら、我々もそれに合わせていきたいとは思っている」

 

こな「そうやってルールが変わるのは、世代が変わらないとなかなか変わらないと思うんですよ。だからこそ自分の世代で、まあ言い方は悪いですけど……無駄なルールを撤廃していきたいってのはあるんです」

 

上司「うん、まあそれはそれで理解はできるよ。変えていきたいっていうのはね。でも、現状あるルールを『こういうふうに変えましょうよ』って意見を言ってくれたことはあるんですか?」

 

いや、あるわけないやろ。

 

上司「誰かが言わないと変わらないじゃないですか。ルールっていうのはね。我々としても、良い方向に持っていきたいっていうふうには思っているわけですよ。だから、意見を言ってもらったら良いと思うんです。まあ、今聞きましたけども」

 

こな「じゃあ、まあ、はい。今、この件を伝えたということで」

 

上司「うん、まあそういうことも含めて、僕の考え方が古いのかも分からないけども、画面に映っている時だけでも、対応していただけないですか。現状ね。だから、皆さんの意見を聞きながら、ルールは変えていきたいと思ってます」

 

俺もそろそろ、ちょっと面倒くさくなってきている。

本来やるべきタスクを止めて、こんな話してるわけだし。

 

こな「……まあとりあえず意見は伝えたので、現状はそうしようと思います」

 

上司「はい。まあゴリ押しする気はないんでね。画面に映ってない時はラフな服装で作業してもらったら良いと思うんです。ね、よろしくお願いします」

 

ひとまずそれで、打ち合わせという名のお説教は終わった。

 

最終的には俺が折れる形になったわけだが、一矢……くらいは報いたんだろうか。

一矢しか報えてない、とも言えるかもしれんが。

 

とりあえず、しばらくは俺もその無駄なルールに従っておこう。

ただ、今後も社内でその話題が一切出ないようなら、いずれまたTシャツで会議に出てやろうと思う。

何も検討されてないなら、意見を伝えた意味が無いからな。

 

 

 

余談だが、俺は物心ついた頃から襟付きの服を着るのが嫌いだった。

親が買ってきても、親戚にプレゼントされても、頑なに着なかった。

まあ制服とかスーツとかジャージは仕方なく着るんだけど。

 

何がどう嫌いなのかは説明できないが、黒板を爪で引っ掻く音くらいとにかく嫌いなんだ。

他人が着てるのは何とも思わないんだけどね。

前世で襟付きの服に親でも殺されたんだろうか。